| 何がどう変わるのか
(ライオンズクラブ国際協会長期計画委員会への報告書/選択的未来研究所/1987年12月)
4-2. 青少年
4-2-1. 失業
第一世界と第三世界の諸国は共通して、青少年に良い教育と適切な社会福祉としかるべき仕事を与えるという課題を抱えている。しかし全世界的に青少年が当面している最も深刻な問題は、失業もしくは不完全就業がいよいよ高まってきていることである。発展途上国の若者は6億6,500万人から、今世紀の終わりには9億人に達するものと見込まれる。国際労働機関(ILO)によると、現在の失業者または不完全就業者の合計は5億人で、そのうちのほとんどは若者である(国際労働機関の技術者報告シリーズ731、33ページ)。
ILOの推計によると2000年までに完全就業を実現するには1億人の仕事が創出され、そのうち88%は発展途上国でなければならないという(バーバラ・ボベイダ、1987年10月11日、ワシントン・ポストA1ページ)。
農村から都市への大移動は経済の面でも、若い世代が農地にとどまっても何ら励みとなる利益もないので、依然として続くであろう。都市移住は人を無名化し、親族との別離、住居難を招くばかりか、若者に共通する諸問題である少年犯罪と若年妊娠、薬物乱用、そして肉体的感情的不健康がつのるばかりである。
これから先、多くの国々は人口過剰や転職、あるいは経済成長による新しい職業の創出からも起こりうる長期的な失業状態から所産される人々の無気力を、何とかして引き立てるためにより多くの力を注ぐ必要に迫られてこよう。
若者たちには、日常的な経済活動の外にあって、もて余した時間を使って建設的な作業に従事する手段を教えなければならない。例えば青少年のための「公民養成」キャンプといった所で、清潔な環境、犯罪防止、社会福祉の手助けなど、若者が社会のためにそんなに役立つことが出来るかを学ばせることも考えられよう。若者たちに生涯的な定職を確保出来ない経済体制の下で、彼らの活力を保つためにどんな代替策があるのか、それを見つけ出すことが何より肝要となろう。
アメリカを始め発展諸国ではいずれそのうち、農業や製造業が歩んだ自動化の道と同じように、販売その他の業務の自動化が進み、それがまた慢性的な失業を産んで、表面的な経済活動の外での意味ある生活は何かという問題を提起することになるだろう。
4-2-2. 就業適正
アメリカ、ヨーロッパの一部、日本を含む「低成長」各国では、青少年の数は減少している。アメリカでは例えば、学齢人口は1970年の5,300万人から1985年の4,350万人に落ち込んだ(労働統計局『今日の重大な問題』、53:4、1986年12月1日、100〜104)。この就職年齢人口の潜在的不足は、アメリカの実業界にとって大きな問題となってきているが、それは若年労働者の数の減少と同時に、就業適正がないために「危険度の高い」青少年が増えているということである。
これから20年にわたって、アメリカの労働要員の構成は大きな変化を受けるだろう。女性といわゆる少数民族の比率が高まる一方、新しい労働力として参入してくる人々の中でも、教育の不足と技術のなさが下手な人間関係と併せて顕在化してきている。経済がほどほどに成長してゆくとするならば、実業界としてはやむを得ず、この「危険な」労働要員の部隊に手を出さざるを得なくなろう。
アメリカでも職場の大きな混乱を経験することになるだろうが、それは他の工業諸国も同様である。推計によると、500万から1,500万の仕事が構造変換を迫られ、ほぼ同数の業務が時代遅れに追い込まれる(全国実業同盟『青少年報告』、1〜4ページ、『2000年の青少年:今こそ行動に』、1986年、『雇用政策:2000年の展望』、1986年。全国知事協会『障壁をなくし仕事と成長と競争力を』、1987年)。1990年までには、4つの仕事のうち3つまでは高卒以上の知識と技術を要するという推定もある。もう陳腐となった昔の予測でさえ、1990年の半ばには新しい仕事の10のうち9まではサービス提供部門であり、中でも最も大きく伸びるのは商業及び保健サービスであろうという(全国実業同盟、前掲書)。こうした変化に対応してゆくには、再教育と再訓練が可能な柔軟な労働要員を持つことが必要となる。
4-2-3. 教育
未来の青少年教育は、すべての国々の重大な関心事となろう。これからは主として農業以外の経済体制の中で、労働力の技術に頼る比重がますます大きくなるからである。教育における進歩は目覚ましいものがあったが、多くの発展途上国の文盲率は50%を割っていない。そのうちの70%は女性である。アメリカでは「危険度の高い」グループの教育が、今後の最大関心事となろう。教育関係者たちは最近、全国の学齢児童のうち3分の1は学業に追いつけないで脱落するか、犯罪や薬物、若年妊娠、慢性的な失業の犠牲となる「危機的状況」にあるという警告を発している。この間の事情を説明するいくつかの事実がある。貧困な生活を送っている子どもの数は全体で、1970年以来、15%から20%に増えているが、少数民族の状態は更に悪い。ラテン・アメリカ民族の子どもの40%、黒人の子どもの43%が貧困である。公立学校の児童のうち少数民族が占める割合は、1976年に24%だったのが2000年に38.4%に増えるものと推定すると、貧困と少数民族が生み出す学校及び社会問題は、ますます増加するに違いない。
青少年の福利が損なわれつつあることは世界的に大きな関心が払われているが、その1つの点景がアメリカの若者たちである。非行は1960年の2倍となり、薬物使用、性病、妊娠及び中絶も全体として増加している(ピーター・ウーレンバーグ/デビッド・エッグビーン『公共の利益』、No.82、1986年冬、25〜38ページ)。更に、自殺とか殺人、自動車事故などの10代の衝動的な死が急激に増えている。
青少年の不安定性は、その原因こそ違え、あらゆる文化に共通して根強いものがある。伝統社会から近代社会への急速な移行、流行する文化とメディア、性へのより大きな寛容、高離婚率と共稼ぎ、これらすべてが大人の責任への青少年の適応を誤らせる原因となった。
4-2-4. 教育改革
さて一方、教育の大改革が、これからの20年間に起きることは間違いない。現行制度は農工業時代の遺物とさえ批判されて久しいが、「学習企業」に取って代わられることになるだろう。必要に迫られて、安価な技術が急激に開発されよう。最善のシナリオどおりにゆけば、コンピューターと聴覚器機による教育が、学習効果を大いに高めていくだろう。コンピューターとの遠距離通信を結んだ「テレマティーク」は、学習者たちの知識への門戸を大きく開くことになろう。人工知能による学習プログラムは、教師たちを反復業務から解き放ち、教育の本来の課題に取り組む時間的なゆとりを取り戻させよう。「情報の読み書き能力」すなわち、どう学ぶかを学び、必要な情報をどうして見つけるかを学ぶことが、教育の新しい焦点として追求されることになるだろう。
更に加えて、うち続く経費の節減と、学校制度の経費効率と効果を強く要望する州政府によって、学校改革は押し進められよう。変わりつつある労働要員としての若者を育てる必要もまた、新技術を学び使いこなす能力を高めるような教育制度への改善の動きを促進することになる。
給与と社会的評価の低さから教師の不足を招き、それが教室での変化を更に進めよう。やむを得ず、企業や地域団体その他の教育機関との連携による代替教育が学校を就業の機会と実生活の模範により近づけることになる。こうした実験は既に始められており、その傾向はますます強くなってゆくであろう。
不完全就業もしくは失業が全世界の青少年にとって深刻な問題であるとして、現在の「ライオンズ-クエスト」はライオンズ各国に対してどんな有効性を持つか?
若者たちの教育に外部団体が大きな役割を果たすことが期待されるとして、ライオンズはどんな役割を果たせるのか? 例えば教師たちの新技術への移行を、ライオンズが援助出来るだろうか?
開発途上国が必要としている青少年計画には、どんなものがあるか?
目次
1. 総括
2. 緒言
3. 地球社会の動向
4. 奉仕分野の動向
5. ライオンズクラブ会員:その課題と意味
6. 勧告
「21世紀を迎えるライオンズクラブ国際協会〜何がどう変わるのか」全文(PDF)ダウンロード
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