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何がどう変わるのか
(ライオンズクラブ国際協会長期計画委員会への報告書/選択的未来研究所/1987年12月)

4-1. 保健

4-1-1. 予防と健康
保健に関する世界的に最も顕著な動向は、病気のための治療から健康増進、更に予防への移行である。これから将来、第一及び第三世界の国々では費用のかさむ入院加療や高額治療は出来るだけ避け、予防と健康のための新技術と知識の普及に重きを置くようになるだろう。

第三世界では、予防のためのとりあえずの目標として、例えば高い幼児死亡率の抑制を続けるだろう。下痢と伝染病を根絶することが出来れば、毎年1,500万人の子どもたちの生命が救われることになる(国連児童基金『世界の子どもの現状』、1987年、オックスフォード新聞、69ページ)。幼児の死亡率が高いことは、生存する子どもへの期待からの高い出生率にも関連し、そのために子どもの生存率がいくらかでも上がることは、また過剰人口の問題に導くことになる。

国連は全世界の子どもを対象に、1990年までに、6つの大きな病気に対する予防接種を拡大する事業計画を立てた(ハシカ、百日咳、ポリオ、ジフテリア、結核、破傷風)。塩と水と砂糖を溶かしたものの経口補水療法などは、下痢の予防に効果のある経費のわずかな手当だが、栄養不良に病む子どもたちを年間に150万人も救っている(前掲書105ページ)。

子どもの生存及び全般的な人間の健康を目指す今後の実際的な展開は、予防接種や経口補水療法のようなあまり費用のかからない手段に加えて、教育とか食糧生産、きれいな水、家族計画を進める政策を合わせた総合的開発戦略が立てられることになろう(前掲書7ページ)。

第一世界での体力増進と健康のための最も基本的な手段には、ほど良い栄養と運動、ストレス解消、それに超過体重やたばこやアルコールの飲み過ぎなどの危険の回避がある。例えばアメリカでは今世紀末までに、女性の平均寿命は80歳、男性は75歳に達するものと予想される(J・ブロディ『老化人口の将来』、ネイチャー、315巻6019号、1985年6月、463〜466ページ)。高齢人口は、有病者人口となるかも知れない。しかし反対に、健康を強調しながら医学の新しい知識を活用してゆけば、それほどの経費をかけないで活力のある高齢者が増え、より健康な社会をもたらすことも可能である。

生物医学の研究における進歩は、驚くべき速さで例えば次のような分野に及んでいる。

  • 免疫学の進展によりエイズやある種のがん、関節炎などを含むウィルスまたは免疫組織の病原体に効果的に介入出来る見通しが開かれた。治療法の改善に伴い、こうした病気のみでなく、単純疱疹、A型肝炎、マラリア、歯根病、その他にも有効なワクチンが開発出来よう。
  • 神経伝達物質及び受容体に関する脳研究では、PET、CAT、NMR走査装置のような新しい機器の登場により、脳の細胞及び亜細胞の動きの解明が進んでいる。この研究によって、精神病の治療や記憶と認知能力の向上に飛躍をもたらすかも知れない。
  • 遺伝子に関する基本的知識と遺伝子工学の進歩は、1個の瑕疵遺伝子(例えばADA遺伝子欠失や鎌状赤血球貧血)から起こる病気の矯正を目前にしている。更に進めば、がんや心臓病を含むいろいろな病気の病原体について、疾病素因の解明も出来よう。こうした解明は、早期治療と有効予防の活用を一層促進しよう。
  • 特定分子に付着するタンパク質の単クローン抗体は、体内の自然物質であるインターフェロンやインターロイキンなどの検出と増殖の研究材料として用いられている。これらの自然物質がどのような働きをするかが判明してくると、治療上の非常に大きな価値を持つことになる。
  • 鼻腔スプレー、注入ポンプ、皮下膜などの新しい施薬法は、より正確な投薬と患者の協力を得やすくしている(IAF/疾病予防・体力増進局『未来の仕事と健康:保健対策への提言』、1987年3月、17ページ)。

体力の増進と健康が保健の未来の「主要動向」であるとするなら、この動向に関連してライオンズの保健奉仕をどのように修正してゆくべきか?
ボランタリー団体としてのライオンズは、保健の推進に独自の役割を果たすにはどうすればよいか?
クラブのアクティビティの自主性を前提としながら、しかも会員たちの奉仕を体力増進と健康に一斉に向けさせるには、ライオンズはどうすればよいか?

4-1-2. 失明と視力保護
発展途上国では
LCIが調べた統計によると、世界には4,200万人の失明者がおり、その数は増えている。そのうち4,000万人、95%が発展途上国の人々である。長期にわたる伝染病、寄生虫と栄養不良が失明と視力問題の主因であり、それらの国々では高度の貧困ゆえに、医療福祉、教育、及び全般的な保健状態は劣悪である(全米保健機関/世界保健機関『アメリカの健康状態』、サイエンティフィック・パブリケーションズ、第1巻500号)。そうした国々での視力保護については、とりあえず費用のかからない早期発見と予防に頼るほかなく、角膜移植のような高度医療技術は、今後10年間に見込まれる何万という受容者たちにとっては、高嶺の花に留まることだろう。

視力障害や失明に対する安価な「救急防備」の1つの例は、子どもたちへのビタミンA補給事業である。世界保健機関によると、世界の子どもたちの5%がビタミンA不足による眼球乾燥症に悩んでいる。これが視力障害と合併すると、ほとんど失明の原因となる。毎年、50万人の子どもが視力を失っているが、眼球乾燥症が大きな原因となっている(『世界のこともたちの現状』、12ページ)。栄養不良の副産物として生ずるこの病気は、これから深刻な人口過剰で悩む国々でますます甚だしくなるであろう。ビタミンAの不足と眼球乾燥症は、アフリカ、中南米及び東南アジアの一部で、重大な保健問題となっている。

ビタミンAの補給計画は世界保健機関によって始められ、世界銀行と製薬各社、それにヘレン・ケラー協会などの財団が協力している。国際的な協力と官民の幅広い合同事業は、地球社会が地球保健問題に当面するに従ってますます普遍してくることになろう。

最近、アメリカの製薬会社が、「糸状虫症」を駆除するため、アイバーメクチンという薬の無償配布をしたが、これも国際的な民間の公益寄与の一例である。通常「河川失明」と呼ばれるこの糸状虫症には、2,000万人から4,000万人の人がかかっている。これは、川床の近くに繁殖する保菌したブヨに何度も刺されると生ずる寄生虫病である。皮下に糸状虫の幼虫を植え付け、それがしばしば目の中にも残るので、視力障害や失明を起こす。河川失明はアフリカ、メキシコ及びラテン・アメリカ各地で保健上の大きな脅威となっている。

ライオンズは、これまでの視力障害に対する援助を再点検し、クラブの最優先アクティビティとして、アメリカ、カナダ、及び全世界に繰り広げるべきか?
ビタミンA補給やアイバーメクチンを必要とする人々に配布する国際的な支援を、ライオンズの手で劇的に素早く実施するには、その組織構造をどのように変えてゆくか?
ある国または地域内の各クラブの援助を動員するには、どうすればよいか?

発展国では
北米では、ライオンズは歴史的に視力保護への貢献で広く知られてきた。1925年、ヘレン・ケラーの呼びかけに応じて以来、ライオンズは「白い杖」の普及、盲導犬訓練、緑内障や糖尿病性網膜症の検診に力を注いだ。更に大きな貢献は、角膜移植のためのアイバンクの拡大に果たしたライオンズの指導力である。アメリカのアイバンクのほぼ60%は、ライオンズの援助を受けている。

北米、ヨーロッパ、日本という高齢化が進む豊かな社会では、組織及び臓器移植の需要が多くなるだろう。人体の自然な退化を補い、生命の価値を高める医療技術は、2000年が近づくにつれてますます活用されることになろう。それは、人工の関節や内耳蝸牛などの補綴機具を始めとし、臓器及び組織の移植に及ぶ。アメリカのみとってみても、角膜移植はこの10年間の間に4倍になった(アメリカ・アイバンク協会『先を見るニュース・レター』、1987年の背景、第8巻1号、2ページ)。最近の立法は、臓器及び組織の提供を更に増加させるものと見られる。1987年度予算の修正に関連して、第99議会は全米「要請命令」法を可決し、これによって角膜提供は300%も増えることが期待される(この法律によって直ちに大きな便益を得るのは、アメリカ移植会議によるとアイバンクであろうという。病院で死亡する人のほとんどが組織提供の適正を持っているが、臓器の提供適正者は4%に過ぎない。「要請命令」法はすべての病院に対し、提供適正者の家族に組織及び臓器を提供する意志があるかどうかを聞くことを義務づけている。この手続きに違反のある病院には、連邦政府の高齢者医療保証金と低所得者及び身体障害者医療扶助金の支払いが停止されることがある)。

こうして組織提供の需要と供給が増えることは、今後のLCIのアイバンク活動の意義を高めることになろう。と同時に、他の保険関連機関でも組織または臓器の預託業務が有益で採算に合うものとして、その事業の拡大に手を伸ばしてくると、LCIは今後20年にわたって激しい競争にさらされることになるかもしれない。

例えば血液センターでは、血液の利用が将来にわたって減少し続けるであろうという大方の見通しの上に立って、その業務を組織、及び臓器の預託に振り返る動きを示している。利用血液量の減少の理由は、高齢化、血液利用の適正化、医療の改善、エイズその他伝染性のある病気への恐れなどである(アメリカ血液委員会『1995年の血液供給:ABC/AFAによるシナリオに基づいて』、1986年)。更にエイズへの脅威が高まってくると、赤十字社に対抗して専用血液者とか個人別血液貯蔵社といった企業の競争が多くなるだろう。これら各社は、不特定提供者の汚染血液に対する一般の恐れを沈める手段として、自己提供や指定提供という市場を扱うことになる。アメリカ血液委員会も最近になって、血液の自己提供が最も安全な方法と認定したが、これが赤十字社その他の血液センターの路線変更を促進することになろう。病院でも持続的な経費節約に迫られ、収入源の一つとして血液保管業務を開始するかもしれない。

以上を要約すると、1つの製品を扱う事業として機能していた血液センターは、その資材と技術をそのまま活用出来るほかの業務に展開するだろうということである。赤十字社はその広範な伝達網を持って、角膜移植のみに限らず、さまざまな組織及び臓器の預託業務に携わる非常に有利な立場にある。

しかし全般的に見て、弱視及び失明に対する高度技術の挑戦は、幅広い分野に展開され続けよう。これまでの数年間に、最新の高度技術機器を備えた科学者たちは、機能を失った眼球部分を取り替え、損傷を修復し、先天性障害を治癒した。これからの数10年間に眼科学における展開として、次のようなものが考えられる。角膜組織に出来た傷を取り除くための「研磨」、レーザー療法による矯正レンズの駆逐、レーザーによる手間と痛みを伴わない網膜障害の検査と診断、目薬に変わる随時医薬「ウエハース」膜、「上皮培養因子(EGFs)」と呼ばれる角膜治癒促進のための引用役の製造など(会議報告書『躍進:新発見ニュースレター』、1987年7月15日別冊)。

ほかの保健専門機関がアイバンクの「預託業務」に進出する意欲と能力を示そうとしている時、ライオンズはその「高い市場占有率」の維持に努めるべきか?
発展国及び発展途上国の双方で、ライオンズが視力保護の先頭に立ち続けるには、どうすればよいか?
全体としては、医療業者やその他の有力な機関が進出してきた分野からは撤退して、ライオンズが何年も前に視力問題を手がけた時のように、新しい分野を開拓していくべきか?

4-1-3. エイズ:未来社会の「ジョーカー」
世界保健機関(WHO)は、エイズを「これまでの流行病にもまして恐るべき流行病」と呼んでいる。

エイズ(AIDS:後天性免疫不全症候群)は、21世紀の保健問題に強烈な影響を与えかねない「ジョーカー」である。エイズに関する見通しは、全くのところ明らかでない。「エイズによって世界人口の4分の1が死滅するかも知れないし、ウィルスの今後の活動と我々自身の行動、そして医学の進歩によっては、最終的には数千万人の死亡で済むかも知れない」(IAF『未来派』、1987年11-12月号10ページ)。最前最悪いずれのシナリオにせよ、数年前にはだれも想像しなかったほど、エイズは地球の未来を変えてしまうだろう。

113カ国から集めたWHOの報告書によると、エイズのウィルス感染者は既に500万から1,000万人に達し、ワクチンがこのまま手に入らなければ、1991年までには1億人に達するだろうという(ジョン・プラット『未来派』、1987年11-12月号10ページ)。この1億、すなわち世界人口の2%という数字から予測すると、1990年代のエイズによる死者は5,000万人にもなり、これは14世紀半ばのヨーロッパを席巻し、7,000万人の生命を奪った黒死病を超える規模になる。エイズが広がり続けることは、従って「人口過剰、飢餓、環境破壊、種の絶滅といったものさえ小さな不満にみせるほどの脅威」なのである(前掲書16ページ)。

疾病行政センター(CDC)の推計では、1987年7月のアメリカ内のエイズ患者は3万8,000人で、このうちおよそ2万2,000人が死亡した。同じくCDCの推計で、アメリカ国内のウィルス感染者は150万人という。

有効な治療も予防ワクチンもないまま、エイズに対抗する唯一の武器は保健教育である。今のところ、アメリカで最も罹患度の高い人々は同性愛者、静脈薬物使用者、血友病患者などで、これらの人々は汚染血液や精液といった体液を通じて感染する危険が最も高い。従ってこれらの人々に対する教育に最大の関心が払われている。

ところがアフリカでは今、異性間のエイズ伝染が広がってきているところから、不特定者と性交渉を持つすべての人々の危険も高いことが指摘されている。複合性行や売春を職業とする人々にエイズが感染していくと、ある国々の指導者層の弱体化を招く可能性も出てくる(海外開発協議会におけるジョン・ティンカーの講演『世界の貧困に向かって勢いを増す死の行進』、1987年10月、パノス協会、バージニア州アレキサンドリア)。それに加えて、特に都会地の青少年は性や薬物の誘惑に引かれやすいので、そうした危険度の高い10代には集中的な教育を施す必要がある。

今日の世界が直面している最も深刻な保健問題について、ライオンズは何が出来、何をなさねばならないか?
ライオンズの青少年計画を拡大して、薬物からエイズまでを含めた対策を取り入れるには、どうすればよいか?
多くの国々の職業人がエイズにかかる危険はますます高まっているが、ライオンズはエイズの予防と教育にどんな役割を果たすのか?

目次

1. 総括

2. 緒言

3. 地球社会の動向

4. 奉仕分野の動向

5. ライオンズクラブ会員:その課題と意味

6. 勧告

「21世紀を迎えるライオンズクラブ国際協会〜何がどう変わるのか」全文(PDF)ダウンロード