| 何がどう変わるのか
(ライオンズクラブ国際協会長期計画委員会への報告書/選択的未来研究所/1987年12月)
3-3. 価値の変化
地球社会ではまた、若い世代が社会の諸制度の中で次第に指導力を持つにつれて、そして即時通信と容易な旅行が、世界中の文化やその他の諸々に相互作用を与えてゆくにつれて、かつてない価値の変化が起きている。LCIは、その伝統に忠実であろうとするならば、この変化の最中にあって、中核となるべき価値を守ってゆかねばならない。と同時に、時代に合わせて存続を図るならば、若い世代を引きつける新しい価値も受容しなければならない。
価値を巡る今日の混乱の中で、何かを生み出そうとしのぎを削っている2つの主要な面がある。その1つは、「近代」と「伝統」社会の間の拮抗であり、それぞれが価値の根源を異にしている。近代社会が手にした知識と経済と制度の力は、今や抑えがたいものである。そこでは伝統の束縛からの自由、新天地、社会的流動性、そして何より魅力的な物質的富が提供される。しかし、伝統的社会に属する多くの人々の立場から見れば、複雑な技術と巨大な官僚組織、あくなき「進歩」の追求は、とてつもない犠牲を伴う。そのいくつかに、次のようなものが挙げられる。
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伝統と主体性の喪失
- 恵まれた家庭と社会生活の破壊
- 社会関係の埋没性
- 感情生活の高度な「管理」と制約
- 伝統文化の中で重要な役割を持った「名誉」その他の概念の消滅
- 社会生活に関連した有益な働き
- 絶え間のない変化と流動による「安息の場」のなさ
- 経済的合理性によるより高い価値の駆逐
- 物質主義による精神主義の壊滅
- 苦痛や悪に対する経験上の知恵を与えてきた信仰心の喪失
- 自然からの隔絶
- 時計やカレンダーによる強制的束縛
第三世界の中でも、こうした犠牲を出来るだけ少なくし、自分たちの伝統文化の独自性と長所を維持しながら、経済開発の推進を図りたいと模索している思慮ある人々も多い。
価値を巡る争いのもう一つの面は、近代社会自体の中にある、近代化に対する不満への対応である。こうした不満に対する近代社会の最も有効な解決策は、保護すべき「私生活」の回りに壁を築き上げることで、その領域内では人々は強靱な諸制度から免れて「実体」を味わい、より自由な表現とより親密な交際、そして自分の好きなこと、例えば社会に対する意味ある奉仕をすることも出来る(ピーター・バーガー/ブリジッド・バーガー/ハンスフリード・ゲルナー『よるべなき精神:近代化と意識』、ニューヨーク、ビンテージ・ブック、1974年)。私生活とは家族、教会、そして任意のボランタリー団体の領域である。社会学の見地からすると、ライオンズクラブは私生活にとって必要な構造的基盤の一部である。これまで何年にもわたって、それは友愛と地域社会と社会奉仕を形成する非常に大切な役割を果たしてきた。
1960年代の初頭、近代化への不満が価値と行動と生活様式の変化というもう一つの形をとって現れ始めた。こうした変化は、程度の差こそあれ、すべての脱工業諸国に起きている。この新しく発生しつつある価値を何と呼ぶか、その合意はまだないが、アメリカで世論調査に携わるダニエル・ヤンケロビッチはこれを新価値、後に明示価値と名付けて、ちょうど地殻プレートが徐々に動いて山を作り地表を飾っていくように、重要な動きだと論じている(ダニエル・ヤンケロビッチ『新しいルール:転倒した世界で自己を達成する方法』、ニューヨーク、ランダム・ハウス、1981年)。国際スタンフォード研究所の、価値と生活様式(VALS)に関する市場調査の中では、この新しい型を自己基準と社会意識の価値と呼んでいる(アーノルド・ミッチェル『アメリカ人の9つの生活様式:我々はどんな人間で、どこへ向かっているのか』、ニューヨーク、マクミラン、1983年)。政治の世論調査の専門家たちは、右であれ左であれ、これを単にベビー・ブーム世代の価値と呼ぶ習わしである(デビッド・ボアズ『左と右、そしてベビー・ブーム:アメリカの新しい政治』、ワシントンDC、CATO研究所、1986年)。政治学者のロナルド・イングルハートは、ヨーロッパ諸国とアメリカの研究の中で、物質主義後の価値の交流を論証している(ロナルド・イングルハート『静かなる革命』)。
この新しい価値体系は私生活の領域を越えて、主要制度の生活の修正を求め、あるいはそれに取って代わるものを打ち立てようとしている。その主張の主なものは次のようなものである。
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物質的な成功や身分ではなく、個人の成長と心の満足
- 意味があって社会的に利益のある仕事
- 「事物」を超越した経験----極端な物質主義の否定
- 適合と健全
- 動機づけは「他者との競争」に対して「最善を尽くす」
- 諸制度の参加と公開
- 人種平等
- 生態学的倫理
- 異説への寛容
- 性の平等
- 自己に忠実
- 厚い親交関係
- 地域社会と家族(最近とみに強調される)
- 大きいことは必ずしもよくない(政府、会社など)
- 財政責任(最近とみに強調される)
- 企業精神(最近とみに強調される)
- 国家的な一体性に加えて地球的な一体性
- 飢餓、戦争、環境汚染などの地球的主要課題処理の重要性
- 以上の主張を否定する諸制度への忠誠とその合理性の否定
ヤンケロビッチ、スタンフォード研究所のVALS、そしてイングルハートの考察が明らかにしているように、こうした体系を支持する人々は西洋の脱工業諸国人口のほぼ5分の1、主として1946年から64年の間に生まれたベビー・ブーム世代が占めている。そしてこの価値体系の諸相は、すべての世代層に浸透している。それゆえにこの価値体系はまた、大まかに25歳から42歳までの年齢層にある「意欲と知恵と大望」を抱いた多くの人々を引きつけるために、LCIが呼び掛けなければならない対象でもある。
こうした価値体系を持つ人々に、LCIの会員となるように勧めるにはどうすればよいか?
この体系の中のどの部分が、LCIの伝統的価値と目的に最も近いか?
LCIの伝統のうち、どれがベビー・ブーマーの価値と一致しないか?
地球の一体感を持つ人々を引きつけるには、LCIの持つ性格の何に焦点を当てるべきか?
地域または国によって、ライオンズの持つ価値はどう変わるか?
変化する女性の役割
女性の権利運動は、恐らく20世紀の「価値転換」中で最も意義あるものであろう。国から国へ、地域から地域へ、女性の平等の道はゆっくりではあるが着実にその歩を進めた。地球的な見地から見れば、女性の「先進国」はない。「女性は世界人口の半分を占め、総労働時間の3分の2を働いているが、収入は全世界の10分の1、財産は100分の1である」(ジョニー・シーガー/アン・オルソン『世界の中の女性:その国際地図』、ニューヨーク、サイモン&シャスター、1986年)。けれども多くの文化の中で次第に女性の立場に変化が生まれ、結婚と仕事と子育ての新しい希望を創出し、教育と職業と政治権力への機会改善の要求が起こされ、また持参金や嫁いびりや陰核切除のような慣習の見直しが行われてきている。
こうした性差別の解消に大きく貢献した要因は、女性労働力の急速な増加である。アメリカでは西暦2000年には女性が全労働力の半分を超えるものと見られる。女性の労働参加の増大につれて、賃金格差も次第になくなってこよう。北米とヨーロッパでは、差は急速に接近してきている。アメリカ企業内の「女性トップ」への進出は目覚ましく、これまで10年間に女性管理者は77%の増加を示した。現在、会計士の45%、コンピューター・プログラマーの40%が女性であり、医療資格者の33%、法曹資格者の37%が女性に占められた(『未来の暼見』、1987年11月16日)。政界でも同様に、特に各州と地方の分野で女性の進出が目立った。
しかしながら、教育水準と労働参加の面で世界的な改善が進む一方で、離婚、別居、移動、婚外出産の件数が増加した。これらは、貧困から逃れ独立しようとする何百万の女性の前途に、大きな障害として立ちはだかっている。
女性の身分についての各国の文化的相違を理解した上で、なおライオンズの中核に女性を組み入れるには、どうすればよいか?
若い男女の関心をLCIに寄せさせるために、例えば質の高い託児・教育施設などのような「女性問題」があるとして、これを主要方針分野に取り上げられるか?
目次
1. 総括
2. 緒言
3. 地球社会の動向
4. 奉仕分野の動向
5. ライオンズクラブ会員:その課題と意味
6. 勧告
「21世紀を迎えるライオンズクラブ国際協会〜何がどう変わるのか」全文(PDF)ダウンロード
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