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何がどう変わるのか
(ライオンズクラブ国際協会長期計画委員会への報告書/選択的未来研究所/1987年12月)

3-1. 地球的経済

いろいろな要因の中でLCIの将来に最も大きなかかわりを持つものは、やはり地球的な経済の動きである。その成長はLCIの成長をも容易にするが、もし混乱が起きれば、最近のメキシコの動向が示す通り、会員が減少する原因となろう。現状から見る限り、これから数年間は、経済的混乱が続くことは明らかである。1987年10月に起きた世界的に大規模な「株式市場の調整」は、次第に広がりつつある不安と懸念の明らかな徴候の一つである。現実的に考えるなら、LCIも下降経済という不測の事態に備えた計画を持つべきだろう。

地球経済は、更に発展してゆく可能性が非常に大きい。なぜならば、技術の多くの分野で画期的な革新が起きており、また第三世界の産業と市場には開発の余地が残されているからである。しかし、3つの前例のない不均衡が、その発展の予測を極度に不確実なものにしている。すなわち、国際貿易、第三世界の債務、そしてエネルギー資源、これらが世界経済をいつ破綻に導くかもしれない脅威となっている。

国際貿易
アメリカの貿易赤字を反転することは、世界経済を調整してゆく上で避けられない問題であり、望ましくはないが、当面する緊急の課題である。アメリカの貿易赤字は世界的な問題とみなされるべきであって、単にアメリカだけのものではない。

アメリカが1982年から87年までの6年間に累積した外国貿易による赤字は5,500億ドルに達し、今や世界最大の債務国となった。国際的な負債が増え続けることは、たとえ経済の超大国といえども我慢出来ることではない。累積債務が増え続けると、アメリカ経済の将来に対する不安が次第に高まり、債権国の個人投資家たちはある時点からそれ以上のドル資産の増加を望まなくなり、各国の中央銀行に対して過剰ドルの吸い上げを要求することになろう。そのようなドル離れが起これば、アメリカの金利はロケットのように空高く舞い上がり、反対に債券市場と投資は沈滞するほかない。これは日本の経済調査機関が「金融恐慌」と呼ぶシナリオである(吉富勝「成長停滞〈『ルック』誌1987年8月号4〜6ページ〉」)。

そのような「金融恐慌」が避けられるものとして、今後の国際貿易がどんな動向を示すかという見方に、大きく分けて次の2つのものがある。その一つは、予測し得る将来にアメリカがその赤字を反転することは出来ないというものである。その最も一般的な意見は、アメリカの経済は「空洞化」が進み、構造的に輸入に依存するほかないとする。アメリカの消費者は品質のよい製品に慣れ、アメリカ企業が生産するものに見向きもしないし、アメリカ政府は予算の赤字を政治的に解決したり、有効な貿易政策を立てることも出来ない。また多くのアメリカ企業は世界的なものの考え方を持たず、外国の市場や文化について知ろうともしない(リチャード・ドロブニク、セルウィン・エンザー「アメリカ貿易赤字の反転:太平洋諸国への影響〈アメリカ商工会議所アジア太平洋協議会(APCAC)第38回会議での報告〉」。1987年10月7〜9日、香港。ドロブニクとエンザーによると、アジア9カ国の実業家、政府及び貿易専門家たちは一致して、予見し得る将来にアメリカがその貿易赤字を反転させることはあり得ないとしている)。もしこの観測が正しいとすれば、それはアメリカにとって容易ならないことである。大きな貿易赤字が長期に続くと、債務はますます累積し、その究極的負担はアメリカ人の将来の生活水準に大きな影を落とすことになろう。結果として、目覚ましい「アジアの興隆」と平行して「アメリカの凋落」が起こり、それは予測もつなかないほど広くて大きな影響を世界に及ぼすだろう。

もう一つの見方は、1990年代の早い時期にアメリカの貿易は黒字になるに違いないとするものである(参照:マーティン・フェルドスタイン「貿易赤字の修正〈『フォリン・アフェアーズ』1987年春号795〜806ページ〉」。レスター・サロウ、ロウラ・ダンドリー・タイソン「経済のブラック・ホール〈『フォリン・ポリシー』1987年夏号3〜21ページ〉」。C・フレッド・バーグステン「経済不均衡と世界政治〈『フォリン・アフェアーズ』1987年春号770〜794ページ〉」)。貿易赤字をそんなに早く反転させるには、大きくて楽でない変化が伴わなければならない。まず円その他の通貨に対するドルの切り下げであり、それは既に始まっているが、何らかの混乱を生ずる危険を免れない。次に米連邦予算の赤字は大幅に縮小される必要がある。3つ目にアメリカ企業は生産性を高め、競争力をつけることであり、4つ目は経済大国である日本、西ドイツ、及びアジア新興工業諸国などが保護主義を抑えて国内市場を開放し、輸出指導による成長政策から離脱して、国内消費拡大による成長路線をとることである。以上のうち、通貨価値の修正とアジア及びヨーロッパの成長政策の変更の2つを実現するには、かつてない規模の国際的な経済協力を要するであろう。

第三世界の債務
成長と緊縮政策、そして支払い延期の合意が第三世界の債務国の利払いを容易にし、ここ数年の間は「債務爆弾」の危機は避けられたと見られていた。ところがここにきて、再び事態は危急の様相を示している。債務の増加が続き、第三世界の債務総額1兆ドルが世界の財政運用に重くのしかかっている。メキシコその他の国々での経済成長は衰え、緊縮政策は失業者の増加をもたらし、生活を切り詰めた多くの人々が社会不安の原因となっている。長年の低成長と先進国による資本の収奪にあえぐ債務諸国の政治指導者たちは、債務救済を強要することの是非を公然と口にするようになっている。

このような緊張関係の中で世界的な景気後退が起きれば、それは第3次の世界債務危機を誘発しないとも限らない。そしてまさにこの点で、第三世界の債務不均衡はアメリカの貿易不均衡と密接にかかわってくる。例え、景気後退が避けられたとしても、アメリカが輸入を縮小することは、他の産業国が自らの市場を開放して肩代わりしない限り、第三世界の経済に打撃を与えることになる。多くの発展途上国、ことにラテン・アメリカ諸国の経済にとって、アメリカの購買力が唯一の頼りとなっている。これらの諸国の1981年から84年までの輸出増加の85%は、アメリカ市場が受け入れた。

事態の最も望ましい方向は、ラテン・アメリカその他の途上各国の市場が成長力を取り戻すことである。第三世界の成長力は、日本と西ドイツの同等の再成長よりも、アメリカの貿易不均衡の改善にはるかに有効である。そしてその成長は、新たな相当額の資本を投下し、あるいは債務救済策の追加によって、促進することが出来る。その救済策は例えば債務償却、利率の低減、返済期間の猶予などがあるが、いずれも危険をはらみ、議論の的となるものばかりである。

エネルギー
1986年、石油の供給過剰によって価格が半分に下がり、政治家を始め一般の関心も低くなった。1973年から74年、更に79年に起きた世界的第1次及び第2次「石油危機」は、記憶から薄れつつあるようだが、第3次あるいはほとんど壊滅的なエネルギー危機が、今世紀末の前後に起きる可能性がある。

皮肉なことに、地球経済の統合的な成長が成功すると、むしろそれが第3次石油危機の誘因となり得る。これまで2回の危機の時と同じように、世界的な成長は石油の消費量を増加させ、それが地球上の安価な石油資源の枯渇を再び招き、石油市場が逼迫して、世界最大かつ相対的に安価な石油供給地である中東に依存せざるを得ない状況を導く。OPECが緩やかに再び勢力を伸ばしてくるか、あるいはこれまでの2回と同様、中東の政治的軍事的火種がまた燃え上がり、それが価格をはね上げるかもしれない(この「周期する危機」の予測を詳細に描いたものは、デニス・パイレージス「1995年の世界エネルギー危機〈『季刊・未来研究』1986年秋号31〜47ページ〉」)。現在の安価なエネルギー価格のままで第3次エネルギー危機が起きれば、世界経済はより大きく傷つくことになろう。石油が安くなったことが、エネルギーの節約と代替資源開発への投資意欲を冷えさせているからである。

エネルギー資源における不均衡に対処する有効な方策は、エネルギーを効率的に「より少ない量で、より大きな効果を上げる」技術を開発して利用することである。エネルギーの効率改善は、甚大な影響をもたらす。例えばアメリカでは、1985年のエネルギー効率上昇による石油の節約量は、86年のペルシャ湾からの輸入量の3倍に匹敵する(エイモリー・ロビンス、ハンター・ロビンス「エネルギー:石油危機は回避出来る〈『アトランティック』誌1987年12月号22〜30ページ〉」)。世界中の国々で省エネルギー技術を取り入れる政策が進められれば、生産性は飛躍的に上がり、中東による石油市場支配に歯止めをかけ、石油の時代に次いで経済的な発展を支えるに足る代替エネルギーを開発する時間的余裕が世界に生まれることになる


不確実の時代と言われる今日、国際貿易を始め、第三世界の債務、エネルギー、その他の経済問題の不確実さは、実は政治の不確実さの問題である。我々の未来にある危険もしくは明るい展望について、もっと長期にわたる地球的見通しは出来ないものだろうか。現在の主権国家が地域にとらわれた偏狭な政治的圧力を克服して、堅実で長期的な世界的成長に向けて、より協調的な政策を打ち出せないものか。
長期的な思考と国際協力という思潮、地球経済の危険な不均衡を是正しようという世論を作り出すために、LCIは何が出来るか?
地球経済の不安が会員の減少の原因であるとするなら、LCIの運営もそれに対応して修正しなければならないが、そのために起きる不測の事態として、どんなことが考えられるか?
大恐慌の時、アメリカのライオンズクラブは社会的に有益な奉仕団体としての役割を果たし、それが多くの会員を満足させたが、今もし経済的な下降が起きたとしたら、ライオンズクラブはどんな役割を果たすことが求められるか?
「困難な時代」の中でLCIが会員を維持してゆくには、自助と相互援助の憲章の中のどれを助長してゆけばよいか?

目次

1. 総括

2. 緒言

3. 地球社会の動向

4. 奉仕分野の動向

5. ライオンズクラブ会員:その課題と意味

6. 勧告

「21世紀を迎えるライオンズクラブ国際協会〜何がどう変わるのか」全文(PDF)ダウンロード