| 何がどう変わるのか
(ライオンズクラブ国際協会長期計画委員会への報告書/選択的未来研究所/1987年12月)
1. 総括
ライオンズクラブ国際協会(LCI)の長期計画委員会からの依頼に基づき、選択的未来研究所(IAF
: The Institute for Alternative Futures)では、ライオニズムの将来に関係のある地球的な動向と、奉仕活動の分野における動向について考察した。長期計画委員会は世界が急激に変わりつつあるとの認識に立ち、その変化を理解した上で、ライオンズクラブが、なお存在を続けてゆくためには、どんな戦略を構築しなければならないかという観点から、この報告書は作成された。時代を先取りして戦略を立てたいという委員会の要請により、IAFはLCIに影響を与える可能性のある主要な動向を分析し、その上で組織及び奉仕活動の面でのいくつかの改善策を提案するという形で、この報告書をまとめた。
最初の節「地球社会における動向」では、LCIのリーダーたちが持つ関心を世界の経済、技術、価値、人口増加、富と年齢の不均衡及び都市化といった主な変革に向けることを求める。これらの諸要因は、世界的な相互依存関係という「主要動向」で一括されるが、そこではすべての国々の繁栄は、他の国々の経済的ひいては政治的地位とますます密接な関連を持つことになろう。LCIもまた、次の動向から強い影響を受けることになる。
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国際貿易と第三世界の債務、及びエネルギー資源という3つの前例のない不均衡によって、世界経済の成長は極めて不安定なものとなる。
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情報革命、生物学革命、原材料革命、エネルギー源の転換などが相次いで起こり、これらは危機と同時に大きな好機をもたらす。
- 価値の変化が「新しい」社会と「古い」社会の間の緊張を作り出し続ける一方、新しい社会自体の中で、近代化への不満に対する対応が迫られている。そうした中で、女性の地位の変化は、恐らく20世紀最大の「価値の変換」と言えよう。
- 西暦2000年までに地球上の人口は60億人になり、増加の95%は発展途上国が占める。西欧諸国の人口は比例的に減少するが、高い人口増加率を示す国々の多くは、人口過剰と貧困、資源の枯渇という諸問題に直面することになろう。
- 脱工業諸国が高齢化する一方で、発展途上国では若い人の比率が高まる。
- 都市部への今の人口移動が続けば、2000年を超えるころには全人口の半分が都市に住むことになる。先進工業国、発展途上国を問わず、都市部では貧困と失業、そして家庭の崩壊による重圧がますます深刻となろう。
次の節「奉仕活動の分野の動向」では、ライオンズが伝統的に最も大きな貢献を果たしてきた2つ、保健と青少年に関する奉仕について、主要な動向に焦点を当てる。
- 保健に関する世界的に最も重要な変化は、病気のための治療から健康増進、更に予防への移行である。第一及び第三世界の人々は、費用のかさむ入院や高額治療を避け、新しい技術や予防と保健の知識普及に、より大きな力を注ぐようになる。子どもへの予防薬接種、食事の改善、運動、ストレス解消などが勧められ、喫煙や飲酒による弊害を避け、生物医学の飛躍的な進歩などによって、生命の質の向上が図られる。
- 視力保護は保健問題の主要な部分を占め続けよう。特に報告のあった4,000万件の失明のうち、95%は第三世界が占めたという。早期発見と予防に各国が取り組んでいる。その一例として、発展途上国の子どものためにビタミンAを補給しようという運動がある。第一世界の諸国では、視力保全の高度技術としての角膜移植が急速に発達し、更に矯正レンズを不要にするためのレーザー治療が進められている。
- エイズは未来の「ジョーカー」であり、世界人口の4分の1を死滅させる可能性もある。が、今後のウイルスの活動いかん、あるいは我々人類の行動または医療の進歩いかんによっては、数千万人の犠牲に抑えることが出来るかもしれない。
- 失業者及び不完全雇用者の増加は、弱体経済の中で若い人口が増大している発展途上国にとって、特に深刻な問題となる。先進工業国においても、これからの社会の労働市場に適応する技術と知識を持たない若者が増えてきて、その処遇に苦しむことになろう。
- アメリカにおいては、社会的な脱落者が増加し、今日の教育システムが、労働市場が必要とする水準に達していないという不満が蓄積して、教育改革への要望が高まっている。
上記の諸動向を踏まえて、IAFはLCIのこれからの会員問題について、次の通り提言する。
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アメリカの会員が占める比率が、他のライオンズ諸国と比較して減少していることは、LCIが真の国際的な組織として活動する機会を提供しているとも言える。
- ライオンズ諸国の中の先進国と発展途上国の間の富の不均衡が拡大しているとするならば、LCIは会員の間にある文化の相違とさまざまな奉仕意欲に関する専門機関となることによって、富める国々と貧しい国々の相互理解の改善に貢献してゆくことが出来る。
- アメリカの平均的な会員像は、人口動態と対応するものである。すなわち、その多くは農業地域に住む50歳の白人男性である。一方、アメリカとカナダの社会はますます平等主義と多人種化が進み、また戦後生まれのいわゆるベビー・ブーム世代の価値観が主流になってきている。LCIとしては、都会及びその近郊に全く新しい型のクラブを作り育てる機会に恵まれたことになる。
- 男性ばかりの既存のクラブに女性の入会を認めたことは、他のクラブ組織に先んじてLCIが女性会員の獲得を積極的に進める機会を得たことになる。
- 歴史が古く伝統を重んずるライオンズクラブほど、変化を受け入れることを困難に感ずるだろうが、若い世代の持つ価値観と期待をもっと表面に押し立てて迫るべきである。
最後の節では、組織と奉仕活動の面でいくつかの勧告を提案する。そこには具体的な実行案も含まれる。
組織面での勧告は、順応力のある革新的な各種法人の前例に基づく。周囲を取り巻く環境の変化に応じて、LCIの組織構造を確立してゆくためには、戦略的観察と明確な目標、そして情報の適切な分析などが不可欠な要因である。勧告の中には次のものが含まれる。
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国際的に独自の組織網を作り上げ、地球社会におけるその役割と責任を会員が自覚するよう、未来世界に関する研究を確信を持って推進する。
- 「これからのボランタリー奉仕団体」に関する国際会議の開催を企画する。これが実現すれば、社会奉仕に真剣に取り組み、更に将来に向けて新しい考えを打ち出すライオンズという立場が固まることになる。
- 女性会員の入会を勧める運動を開始する。ライオンズは今や、女性に関する差別の撤廃を口先だけで唱えているのではない。ことに女性は特有の熱意と才能で、アメリカの後退する男性会員を補って余りある可能性を秘めている。
- アメリカの「ベビー・ブーム」世代のうち最も活動的で高い教育を受けた人々の意識調査を行い、(1)彼らはこれまでのライオニズムの業績の中で何に最もひかれ、反対に何に最もひかれなかったか、(2)この報告書による勧告その他、どんな変革を望んでいるか、などを聞いてみる。
- ライオンズクラブ国際財団(LCIF)の活動報告と運営構造を詳細に調べ、世界的な事業計画を先導するにふさわしい体質を持たせる。
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キューバ、ハンガリー、中国などの共産主義諸国に実験的にクラブを設立してみる可能性を探る。もしそれが可能なら、ライオンズは地球社会ひいては世界平和を真剣に希求する団体としての地位を手にすることになろう。最近のレーガン‐ゴルバチョフ首脳会談による米ソ関係の緊張緩和を、LCIは大いに利用すべきである。
- 緊急奉仕活動の内部手続を完備させて、経済的な「窮乏」に対応出来るようにしておく。
奉仕についての勧告は、次のような想定に基づくものである。すなわち、奉仕は成果を収めた過去の実例の上に積み上げられるべきこと、新規の事業には広範な調査と戦略的計画を前提とすべきこと、LCIの持つ力と姿をより高めてゆくために、PRと協調性を駆使すべきこと。そこで奉仕に関する勧告としては、次のようなものがある。
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保健奉仕を整理統合して、LCIの国際的な奉仕活動の主流を視力保護に集中させ、治療よりも予防に重点を置く。
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失明を防ぐための国際的な協力を迅速に呼び起こす訓練を試みる。
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エイズ教育の世界的な運動を始める。エイズは今日の世界の最も深刻な保健問題であり、例えわずかでもLCIがその予防に関心を表すことによって、社会奉仕団体としてのライオンズの存在を示すことになり、他の多くのボランタリー団体の中でも目立つことになろう。
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青少年の「就業適性」の運動を起こし、世界に広げる。発展途上国の仕事不足であれ、アメリカのような国々の仕事への適応不足であれ、将来の雇用の問題は青少年の最大の関心事である。ライオンズ‐クエスト・プログラムによって教育と薬物乱用防止に取り組んで、見事な成果を上げたライオンズは、更にその手を広げて、より幅広い十代の青少年を巻き込み、会員の直接的な関与を促進させることが出来る。
- 「国際的非識字者」を対象とする教材を開発する。これはことにアメリカの青少年の間で大きな問題になりつつあるが、もしライオンズが「価値教育」の分野で有効な教育課程の開発に成功することが出来れば、アメリカの子どもたちの世界への無知・それがこの国の国際的競争力の障害となっているのだが・それをなくすためのかけがえのない奉仕活動となろう。そのほか、例えば地方ごとの地理教育を改善し、外国語教育の機会を増やすことも勧められる。
目次
1. 総括
2. 緒言
3. 地球社会の動向
4. 奉仕分野の動向
5. ライオンズクラブ会員:その課題と意味
6. 勧告
「21世紀を迎えるライオンズクラブ国際協会〜何がどう変わるのか」全文(PDF)ダウンロード |